
1. 遺言書の「付言(ふげん)」とは? 法的ルールを超えたメッセージ
遺言書は財産を分けるための無機質な法的書類と思われがちです。
しかし、「付言」という項目を使うことで、家族への思いや遺言内容を決めるに至った心情などを書き添えることができます。
この「付言」には遺言本文とは異なり、法的な効力はありませんが、次のようなことが期待できます。
- 速やかに遺言が執行される
- 相続人間の紛争を防止する
2. 家族の「なぜ?」を解消し、争いを防ぐ付言の活用例
付言には法的な強制力はありませんが、付言を書くことで結果としてスムーズな相続(「争族」対策)につながることがあります。
ここでは「付言事項」のオリジナルの文例を紹介します。
文例1:家業を継ぐ次男へ多く財産を残す場合
付言事項
私が今日まで幸せに過ごしてこられたのは、家族みんなの支えがあったからこそであり、心から感謝しています。今回、次男の二郎に実家の土地と建物、そして代々引き継いできた事業の財産を多く残すことにしたのは、これからの厳しい時代に二郎に事業の重い責任を背負わせることになるためであり、決して子どもたちへの愛情に差があるわけではありません。長男の太郎と長女の一子には少し寂しい思いをさせるかもしれませんが、どうか私の真意を理解してください。お互いに不満をもつことなく、今後も兄弟三人で末永く仲良く助け合って生きていってくれることが私の切なる願いです。
上記は、兄弟間で均等ではない財産の分け方を指定した場合の付言の例です。
たとえばこのような言葉が遺言書の最後に記されているのといないのとでは、遺言書が子どもたちに与える印象は変わってくるでしょう。
もう一つ、オリジナルの例です。
文例2:妻へ全財産を残す場合
付言事項
長年にわたり連れ添い、私が病気になってからも文句一つ言わずに献身的に支え続けてくれた妻には、言葉では言い尽くせないほど深く感謝しています。 私が亡くなった後、妻が経済的な不安を感じることなく住み慣れたこの家で穏やかな老後を過ごせるように、そして将来の医療費や介護費用の備えとして、全財産を妻に相続させることにしました。 子どもたちはすでにそれぞれ独立し、立派に自分の家庭を築いてくれていることを、私はとても誇りに思っています。だからこそ、子どもたちには私のこの決断をどうか理解してもらい、母さんのこれからの生活を第一に考え、今後も家族全員で母さんを温かく見守り、大切にしてあげてください。
これは妻だけに財産を残すときの付言の例です。
このように書くことで妻と子どもたちに思いが伝われば、遺言内容がスムーズに実行される助けになるかもしれません。
また、逆効果になるようなことは書くのを避けるべきでしょう。
逆効果になることとはたとえば、特定の相続人への恨み言のようなことです。
文例3:恨み言(書くべきではない例)
付言事項
私が病気になってから、長女は献身的に私の介護をしてくれた。一方、長男は今日まで一度も見舞いに来ておらず、連絡もしてこない。よって全財産を長女に遺すことにする。長男は不平を言わないように。
上のような付言は、事実であったとしても書くべきではないと考えます。
恨み言を書かれた特定の相続人は気分を害しますし、「この遺言は長女の入れ知恵で書かれたのではないか」「遺言自体が偽物ではないか」という疑いをもつかもしれません。
そうなると、速やかな遺言執行の妨げになりますし、相続人間の紛争を助長することにもつながりかねません。
3. まとめ
遺言書には「付言(ふげん)」を書き添えることができます。
付言には法的な効力はありませんが、相続人への思いや遺言内容の理由などを記すことで、遺言のスムーズな執行や相続人間の紛争を防止する効果が期待できます。
必ず書かなければならないというものではありませんが、必要に応じて付言事項を書くことを検討すると良いでしょう。
ただし、恨み言は書くべきではないと考えます。
思いが伝わる遺言書の作成をご相談したい方は、行政書士にご相談されてみてはいかがでしょうか。
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