
公証役場で公証人が作成する、公正証書遺言。もっともポピュラーな遺言の形式といえます。
この記事では「公証役場に行く当日」の流れを解説します(行政書士等の専門家に依頼した場合の流れ)。
公証役場に行く機会は普通はめったにありませんから、あらかじめ当日の流れを知っておくことで、無駄な緊張を感じず、ミスを減らすことにもつながるでしょう。
1. 公証役場へ行く人と持ち物
公正証書遺言を作成するためには、最終的には「公証役場」に行きます。
このとき参加する人は、遺言者本人、公証人、そして証人2名です。
公証人とは
公証人は、国家公務員法上の公務員ではありませんが、国の公務である公証作用を担う実質的な公務員です。
公証人は、原則として、裁判官や検察官あるいは弁護士として法律実務に携わった者で、公募に応じたものの中から、法務大臣が任命しています(公証人法第13条)。また、多年法務事務に携わり法曹有資格者に準ずる学識経験を有する者で公募に応じ、かつ、検察官・公証人特別任用等審査会の選考を経たものについても、法務大臣が公証人に任命しています(公証人法第13条の2)。
公証人は、国の公務である公証作用を担う実質的な公務員ですが、国から給与や補助金など一切の金銭的給付を受けず、国が定めた手数料収入によって事務を運営しており、手数料制の公務員とも言われています。
—以上、日本公証人連合会ホームページ「第1 公証人の使命と公証業務について」より引用—
つまり、公証人は法律のプロフェッショナルであり、明確に定められた手数料をその収入とします。
手数料は国が定めているので、たとえば同じ人が同じ公正証書遺言を作るのに、A公証役場とB公証役場で手数料が異なる、ということはありません。
あなたが行政書士等の専門家に依頼する場合、まず行政書士等が遺言の草案を作成し、公証人が最終的な遺言書を作成することになります。
行政書士が作成した草案と、公証人が作成した公正証書遺言で微妙に言い回しが異なる場合がありますが、意味や効果としては同じといえるでしょう。
証人とは
当日は、証人2名以上の立会いが必要です(2名「以上」となっていますが、2名だけの場合が多いでしょう)。
証人の名前は遺言書の中にも記載されることになり、最後には遺言書に署名もします。
家族など利害関係のある人は証人になることができません。
なので、たとえば当日公証役場に遺言する本人の子どもが付き添ったとしても、その子どもは現場に立ち会うことはできず、別室などで待ってもらうことになります。
行政書士に依頼をした場合は、その行政書士が一人目の証人となり、その行政書士が提携している別の行政書士などが二人目の証人になるというパターンが多いでしょう。
利害関係のない友人に証人を頼みたいという方もいるかもしれませんが、当然ながら証人には遺言書の内容、すなわち自分の財産を知られることになってしまうので、おすすめはできません。
職務上、守秘義務のある行政書士などの専門家にまかせたほうがよいでしょう。
また、証人の役目は立ち会う(その場にいて見届ける)のみです。証人が、遺言する本人と遺言の内容のことで何か言葉を交わしたり、助け舟を出すということは原則としてできません。
当日の持ち物
事前の財産調査や公証人との文案の打ち合わせは行政書士が済ませているため、当日、遺言者本人の持ち物は多くはありません。
- 実印
- 印鑑証明書
これにより本人確認が行われます。印鑑証明書は、もし事前に行政書士に預けている場合は当日持っていく必要はありません。
注意しなければならないのは、実印だと思い込んで持って行ったハンコが認印だった、というミスです。
印影確認をしてから当日ハンコを持っていくようにしましょう。
2. 公証役場での所要時間は? 作成当日の具体的な流れ(4ステップ)
作成当日の流れを解説します。
STEP1:公証役場に行く前の、当日の最終打ち合わせ
(このステップをとばして、公証役場で行政書士と現地集合するという場合もあるかもしれません)
当日、公証人のいる公証役場に赴く前に、遺言する人の自宅や依頼した行政書士の事務所などで最終打ち合わせを行います。
最終打ち合わせが必要な理由は、公証役場で公証人に遺言の内容を聞かれたときに、遺言者本人が自分で答えられるようにしておくためです。
公証人は、遺言する人が自分の意思で遺言書を残すことを確認できなければ、公正証書遺言を作成してくれません。
つまり、遺言する本人は、遺言書の内容をしっかりと公証人に伝えられなければなりません。遺言の内容が多少複雑で覚えにくいものであったとしてもです。
カンペはなく、しかも証人(依頼した行政書士など)が助け舟を出すことはできません。
そのため、公証役場に行く直前に行政書士とリハーサルを行ったほうが良いのです。
STEP2:公証役場で公証人と対面 遺言内容の読み聞かせ
公証役場に到着しました。行政書士からあらかじめ知らされていた、公証人への手数料を支払います。
密室に移動し、公証人、遺言本人、証人2名の合計4名だけの空間になります。
もし密室を作れない公証役場であれば、パーテーションで仕切ったスペースに4名が集まります。
遺言者の本人確認を行います。遺言者から実印と印鑑証明書を公証人に預け、印影を確認することで本人確認をします。
続いて、公証人が遺言者にいくつか質問をします。
公証人に質問される例とその答え方としては、以下のようなものがあります。
- あなた(遺言する人)の氏名と生年月日を言ってください
- 今日ここまでどうやって来ましたか ⇒ 「長男の車に乗せてもらいました」
- 財産はなにがありますか ⇒ 「自宅の土地建物と預金です」
- 預金を預けている銀行名を教えてください ⇒ 「A銀行とB信用金庫とC産業組合です」
- 財産を分ける相手のお名前を教えてください ⇒ 「長男の太郎、次男の二郎、長女の花子です」
- 財産の分け方(割合)を教えてください ⇒ 「不動産はすべて長男の太郎に、預金は5分の1を太郎に、二郎と花子にそれぞれ5分の2ずつ分けます」
- 他に財産がある場合は誰に分けますか ⇒ 「すべて長男の太郎に」
- あなたが亡くなった時、この遺言に書いてあることをどなたに実行してもらいますか ⇒ 「行政書士の〇〇さんに」など
上記の例では、遺産となるものは不動産と預金だけなのでシンプルですが、それでも預金の割合などは不意に忘れしてしまう可能性は十分あると思います。慣れない雰囲気で緊張もするでしょうから。
実際には、これらの質問にひとつでも答えられなければ遺言の作成は即中止、というほどには厳しくはないでしょう。
証人(行政書士など)は助け舟を出せませんが、公証人は質問しながら少しはヒントを与えてくれるかもしれません。
しかし、質問に全然答えられず、自分の意思で決めたはずの遺言の内容を全く分かっていない、と公証人に判断されてしまったら、最悪の場合、遺言ができないということにもなりかねません。
そのようなリスクを減らす意味で、STEP1の最終打ち合わせは重要なのです。
STEP3:内容の承認と電子署名
公証人からの質問を無事に乗り越えると、公証人が遺言を読み上げます。
内容に間違いがなければ、遺言者本人、証人2名、公証人の順番で遺言書に署名します。
現在は電子署名になっており、タブレットやパソコンの画面に専用のペンで署名します(余談ですが公証役場によって導入している機器が異なり、書きやすさに大きな違いがあるようです)。
STEP4:完成と交付
その場にいる全員の電子署名が完了すると、遺言書の完成です。
遺言書は、「原本」「正本」「謄本」の3つが作られます。
このうち「原本(げんぽん)」が原則としてデータの状態で公証役場に保管されます。
「正本(せいほん)」と「謄本(とうほん)」は、紙に印刷されたものが、遺言者に交付されます。内容的には原本と同じです。
正本や謄本は、遺言を執行する際などに、たとえば銀行の解約手続きをする際に提示する必要があるので、大切に保管しておきましょう。
ただし、大切にと言っても、銀行などの貸金庫に入れておくのはあまりおすすめできません。遺言者が亡くなった後、貸金庫から取り出すハードルがかなり上がってしまうためです。
3. 完成した遺言書はどうする? 「正本」は専門家(遺言執行者)に預けて安心
依頼した行政書士を「遺言執行者」に指定して遺言書の「正本」を預けておけば、万が一の時も家族が相続手続きに迷うことなく、速やかに行政書士が手続き(銀行の解約など)を行うことができます。
または遺言によって財産を多く取得する相続人などに預けておくと良いでしょう。
また「謄本」は遺言者自身が保管しておくのが良いでしょう。
4. 【まとめ】専門家がいれば当日は安心! 事前準備でスムーズな遺言作成を
公正証書遺言の作成当日は、慣れない公証役場で緊張するかもしれませんが、事前に行政書士とともにしっかりとリハーサルを行い、行政書士が証人として同席することで安心して臨めるでしょう。
また、遺言書は作って終わりではなく、将来確実に実行されることが大事です。
行政書士は、公正証書遺言の原案の作成から公証人との打ち合わせ、証人としての当日の立会い、そして遺言した方が亡くなった後の「遺言執行」まで行うことができます。
「遺言を書いておきたいけれど誰に聞けばいいか分からない」という方は、お気軽に行政書士にご相談ください。
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